アメリカの消費者金融 ペイデイローンの恐ろしいからくり。借り入れ時に実際には使えない商品券が渡される理由とは?

ペイデイローン

海の向こう・アメリカの消費者金融と言えば「ペイデイローン」と呼ばれるものが有名です。

「ペイデイ」とは、給料日(payday)を指します。このローンは次に入る給料を担保に貸し付けをすることから、このようなネーミングになっています。300ドル程度までの小口を、短期で貸し付けするのが特徴で、期間は基本2週間。なぜ2週間かと言うと、アメリカでは月に2回、2週間ごとに給料が支払われるケースが多いためです。

日本の消費者金融では利息制限法があり、現在最大金利が20%までに定められています。同じようにアメリカでは各州法によって、通常10%台程度の金利に規定されていることが多いようです。しかしやはり州によって差があり、まったく金利制限を定めていない州もあれば、ペイデイローン自体を禁止している州もあるとか。

しかし、かりに州法で上限金利が定めらていても、法律の網をかいくぐって、ペイデイローンには恐ろしいからくりがあるというのです。本来なら10%台に収まるはずの金利が、実質年利700%にもなることがあるとか!?いったいどのような仕組みになっているのでしょう?

100ドル

例えばペイデイローンで、100ドルを借りる場合を見てみましょう。

借りたい人は、業者から100ドル貸し付けてもらえるように、まず申込みを行います。
審査に通過すると、業者からは100ドルの現金と一緒に、30ドルの商品券を渡されます。このうち、現金の100ドルは、そのまま借入金ということになりますが、問題は、30ドル分の商品券の意味合いです。

実は商品券とは名ばかりで、これらは実際には何の役にも立たない商品券、つまり、使えない商品券なのです。言って見ればただの紙切れ。しかし、2週間後の返済時には、商品券分の30ドルを上乗せし、130ドルの返済が必要になります。つまり、使えない商品券が実質的な違法金利の「隠れみの」になっているのです。2週間で30ドルの利息では、年利換算すると700%超!にわかに信じがたいほどの高金利です。

利用者は貸付けを受けるときにあらかじめ130ドルで小切手を切り、業者に渡しておくのがアメリカ式。期限となる2週間後に業者が銀行に小切手を渡して、返済は終了です。このようなシステムなので、貸し倒れが少ない(3%程度)のも、ペイデイローンの特徴のようですね。

アメリカでは小切手の利用が定着しているため、万一小切手の支払いが不能になり、銀行口座が凍結されると、多大なリスクが降って掛かります。また、貸し倒れすることによってペイデイローンが使えなくなると、生活が脅かされる人もたくさんいますので、どうにか工面して返済できるよう、借りた方も頑張るのだとか。

ローン

こんなにあくどい(!)ペイデイローンですが、小口融資のビジネスモデルとまで言われ、業者の中には上場企業まで現れるほど成長を遂げたところもあるそうです。ここまでペイデイローンが社会的に受け入れられた理由はどこにあるのでしょうか?

そもそもアメリカで融資を受ける際には、クレジットスコアと呼ばれる、個人の信用度合いのランクが大きく影響します。日本とは比較にならないほど個人信用の格差が大きく、信用度合いの層によってよく利用される金融商品が異なっています。

ペイデイローンは比較的低所得者向けのローンで、サブプライム層をターゲットにしたローンです。個人信用度の高い、お金を貸しても大丈夫な安定したそうを「プライム層」と呼ぶのに対して、その下位に位置する、信用度の低い、融資を受ける際に不利な条件を持つ層を「サブプライム層」と呼びます。

アメリカでは2007年ごろの住宅バブルの崩壊を背景にした景気悪化により、サブプライム層が急増しました。と言うのも、住宅バブル期に、サブプライム層をターゲットにした高額な住宅ローンが、あちこちでほとんど無審査の状態で、大量に組まれたようです。いずれ返済不能に陥った際に、住宅を回収・転売して貸し倒れを防ぐのが銀行などの算段だったようですが、バブルは崩壊し、住宅が値下がりして債権回収もできませんでした。ローン債権は証券化されて世界中に出回っていたので、倒産に追い込まれるヘッジファンドが続出しました。

このような一連のサブプライム問題以降、クレジットカードが使えない層が急増していると言われており、そのような層の命綱になっているのが、ペイデイローンなのですね。

アメリカの貧困層の多く住む地域には、ペイデイローンの店舗が軒を連ねるところもあるそうです。一通りの需要を満たしたので、特に成長産業と言うわけではなさそうですが、高金利なのはわかっていても、やはり生活のために借り入れをせざるを得ない層は残っています。

しかし、やはり過剰債務に陥りやすいペイデイローンの根本的な問題点から、コネチカット州、メリーランド州、ニュージャージー州など、いくつかの州ではペイデイローン自体を禁止しているそうです。